ムットン調査団269高齢者施設6最終戦

各位

高齢者施設シリーズもいよいよ大詰めです。

その日は来るべくして来たんだと思います。

私がいた高齢者施設の所長(高齢者福祉課長兼務)はいつもは区役所にいて私がいる施設にはめったに来ないのですがが平日の昼間に突然来たんですよ。

これは、例の事件で来たなとピンと来ました。結構ドキドキしましたよ、心構えなしで突然来たんですから。

そして、来るなりすぐに「大〇君ちょっと来てくれ話がある」と言って二階に行きました。

もう、この時点で何を言われるのかはわかります。こちらも腹をくくって課長との面談に臨もうと思いました。「ここが勝負どころだ。言うべきは、ハッキリ言おう、頑張れ俺、ファイト俺」みたいな感じで二階の個室に向かいました。見送る職員たちは、きっと私が課長にこっぴどく怒られると思っているのでウキウキしていたかもしれません。

そして、ついにラスボスとの闘いの火ぶたが切られたわけです・・・少し大げさですかね

課長は座るとすぐに言いました。「アルバイトが帰る時に賃金が払えなくて、職員がみんなで、お金を出し合って賃金を支払ったと報告を受けた。こんな事はあってはならないことだ。事務屋にあるまじき事だ」この「事務屋にあるまじき事だ」と言われたセリフは昨日のようにはっきり覚えています。そして、課長は「どうしてこんな事が起きたんだ、アルバイトに賃金が払えなかったなど言語道断だ、厳重注意だ反省しなさい。こんなことが二度と起こらないようにしてください。その後もお叱りが続き、最後に何か言いたい事はあるかと」聞いてきました。

私が言ったセリフもかなり正確に覚えています。

「課長に言われるまでは、ずっと黙っているつもりでした。今回のアルバイト賃金の件ですが、課長は私が何の手続きもしていなかったので賃金が払えなかったと思っていませんか、実は支払いの手続きは全てやっており当日たまたま人事からの連絡がなかったのです、勿論夕方アルバイトが帰る時まで気づかなかったのは私の責任で反省しています。

いつもは「賃金を取りに来てください」と人事から電話があり、その後で役所に賃金を取りにいくのですが、その日は人事が私に電話をするのを忘れてしまい、私もアルバイトが帰る時に人事からの電話がないことに気づき、あわてて人事に連絡しました。人事のほうでは連絡を忘れたことを謝っていました。私も連絡があるのが当然だと思い込みうっかりしていましたが、賃金が出る事務処理は全て完了しており、後は取りにいくだけでした。

アルバイトの方は賃金は明日でも構わないと言っていましたが、私が10分待ってくれればすぐに渡せるから待っていてくれと頼んだのです。

すると職員がみんなでお金をだして払うとか言い出したので、そんなことは絶対にしないでください。すぐに払えるのですからと言って私は自転車を飛ばして賃金を取りにいったのです。

しかし、やめてくれと言っているのに、わざとみんなでお金を出し合ってアルバイトにお金を渡したんですよ。そこまで知っていましたか? 10分待ってくれと言ってすぐに自転車で賃金をとりに行って、戻ったらみんなで金だしあってアルバイト代を払って帰してしまったんですよ、こんな事ありえませんよ。 でも私は今課長に怒られるまで、ずっと黙っていました、どうせ課長には私の悪口しか届いていないし、わざわざ私の悪口を言われていませんかなんて聞きに行く職員いませんから

課長から言いたい事があるかと言われたので、覚えてる限りの話をしました、「職員から課長にこんな報告を受けていませんか?この真実はこうです」と何十にも及ぶ事例を課長に話しました。

多分、自分の中でたまっていたものを全部吐き出したんだと思います。

そして私は課長に言いました「課長はこの高齢者施設に全然こなくて、全のことをS係長にまかせている。

課長は去年まではここの専属の所長でしたが今年度からは高齢者福祉課長兼務で忙しいのは、わかりますが土曜日など午後に顔出すくらいできましたよね?」(この当時の土曜日における一般的な勤務は役所に午前中だけ出勤する週44時間勤務、センターは土日PM5時まで勤務で月曜休みの週48時間勤務)

「そして、係長はじめ多くの職員から言われた事を真に受けて、私には一度たりとも事実確認することをしないで今日に至ったのです。一方的な話だけを信じて私が最低の仕事も出来ない職員だと思っていませんでしたか、課長はちゃんと人事管理や仕事の管理が出来ていたのですか?私はもう限界状態です」私は堰を切ったように言葉が止まりませんでした。

多分、必死の訴えだったと思います。

そこで私は役所人生で最初で最後のこの暴言とも言うべきセリフを課長に言ったのです。

 

・・・・・「あなたには管理職の資格がない!」・・・・・・

 

言った自分ですら驚く言葉でした。多分感情が高まり思わず出た言葉だったんだと思います。冷静なら絶対に言えない台詞です。

私の役所人生で上司にこんな事言ったのは、後にも先にもこの時以外ありません。

器の小さい課長なら、若造に「あなたには管理職の資格がない」なんて言われたら切れちゃいますよ

でも、この課長は立派でした、怒ってもいい言葉を投げかけたのに

「大〇君すまなかった」と私にあやまり頭を下げたのです。

この一言で私は救われたのです。これで勝負ありです。

「これからは、高齢者施設の事をもっとしっかり見ていくし、職員たちからの話も鵜呑みにしない」と約束してくれました。

私も課長に言いました「今後は何かあったら私も課長に直接言います、そして課長は関係者の話を聞いたうえで公平、公正に物事を判断してください」

本来なら課長からS係長にきつく叱ってもらいたいとこですが、当時の私は課長の謝罪で十分満足でした。

すがすがしい気分で職場に戻りました。すかさず、「何を聞かれたと」S係長に言われてたので、私は「ただの世間話です、楽しい時間でしたよ」と余裕をかましました。みんなはきっと私が課長に厳しく怒られて、しょげて戻ってくると思ったんでしょう、私が元気なので、さぞガッカリしたことでしょう。

ざまあみろです。

ドラマなら、「倍返しだ!」と言って、完膚なきまでS係長やみんなを叩き潰すとこですが、それはドラマの世界、現実は何もなかったように通常通り淡々と仕事をするだけです。

私も心に余裕が生まれたので、何かあったら何時でもかかってこいやと思ってたのですが、何も起こりませんでした。やはり課長が係長を注意したのですかねえ。これは今だにわかりません。

しかし、その後確実に職場で変化が現れます。課長はまず原義の決済を定型的な支払い以外は自分でするからと係長に指示をしました、さらに毎土曜日の午後に顔を出すようになりました。

課長は高齢者施設に来た際は事業の実施原義など細かく見てから決済をし、夕方5時まで施設にいるようになったのです。当然、職場全体の様子も注意深く見ていました。

課長は私との約束を守ってくれたわけです。職員はみんな課長の変身に戸惑っていたと思います。

そんなこんなで課長とのやり取りから約一か月後、施設に来て丸一年がたち、私はいろいろすったもんだの末、(総務部長、課長数人、係長数人が私の異動に対して大バトルがあり)一年で異動になりました。・・・・この部課長のバトルも書くと長くなるので途中はほとんど、とばします。要は管理職たちが私を異動させろ、いやさせない、話が違う、約束は守れと、まあかなり揉めたそうです。最終的に当時の税務課長がそんなに揉めて、ぐちゃぐちゃしてるなら私のところで大〇君を引き取りたいとなって税務課に異動になったそうです。

センターの所長はその後、企画課長に異動し、その数年後、東京都に戻っていきました。

まさに、嵐のような1年でした。イジメは人が集まったところでは、大なり小なりはあっても必ず起こるものだと思います

その時にどう対処したらいいのか、難しい問題ですね。

普通、物語はここで終わるのですが、まだ少し後日談があります。

運命のいたずら と言ったら少し言い過ぎかな なんだろう、気になりますか?

それは、また次回で