ムットン調査団201(79、高校の授業)

各位

さて、今回は高校の体育の授業の話をします。

高校の体育の授業についてまず思い出すのがバスケの実技試験です

バスケットでドリブルしながら走ってきて、シュートを打つという、まあありふれた試験です。スタート地点からシュートを打つ地点までちゃんとドリブルは出来ているか、シュートとの体制やボールはネットの中に入るか等々。

5段階評価です。先生が一人ひとりの実技が終わると、その場で評価を言います。何人かの試験が始まり最初は普通に評価していると思ったんですが、先生が次「桑田」と呼び、生徒が「桑田は今日休んでます」と言うと、先生が「桑田か、うーん桑田は5」だなと言ったんです。「えーこれ実技試験じゃないやん」と思いましたよ、確かに桑田は運動神経良かったから当日実技試験を受けていたら多分5でしょう、でも欠席なんですよ、この試験は顔で決まっているのか。

そうなんです、クラスの中で運動神経が悪い生徒Xがたまたまドリブルも、うまくこなし、シュートも成功したんです。なのに先生は「1」と言ったんです。

あの時Xはどんな気持ちだったんだろう。

私は思いましたよ、この試験やる意味が全くないじゃないかと、実技試験という名の顔で決まる試験でした。

まあ、理不尽とはこういうものだと、生徒達にはいい勉強になりました。

次はバスケのチーム編成の時の話です

先生がバスケの上手い生徒の名前を8人呼びました。

「よし、このあとはドラフト制でいく、これが一番公平だろ」と言ってましたが、最初にドラフトが一巡すると次からは各チームは二人で誰を取るか相談するわけです。

こうして運動神経のよい生徒から抜けていきます。いつまでも残っていると運動神経なしの烙印を押されますから、残っている生徒にとっては嫌な制度だと言う事を先生は理解していない。半分あたりで名前を呼ばれてほっとしたのを覚えています。

最後の方に残った生徒はみな大人しく目立たない真面目君たちでした。

8で割り切れない生徒が一人だけ残ったんです。

先生が「おい、誰かこいつをもらってくれ」と言ったんです・・ひどい言い方です

それより残酷なのは生徒達「いらねえ、もらっても困る、絶対いらねえ」と各班全部拒否

一人残った生徒Yは下を向いたまま座っています、残酷ですが仕方ないです早実では思ったままを、みんな口にします。きれいごとを言う奴はいません。

先生は最後に無理やりどこかの班にいれましたが、その班はブーイングでした。

まあ、何ていうか、こんな事でくじけていては立派な早実生にはなれません。

その彼も立派に高校を卒業し、社会科学部にはいりました。・・あんなに真面目にコツコツ勉強してたのに私と同じ社学という奴が結構いました。

次は柔道です

中学の必修は剣道でしたが、高校は柔道でした。

各学期の最後にはクラス内の試合があったんです。そこで私はクラスに柔道部の黒帯が二人いたので、この二人を何とかして倒そうと思ったんです。

私は一人で区立総合体育館に行き、柔道場で教えてくださいと飛び込みました。

今思うと、黒帯の柔道部倒すために、よくあんな行動とれたなと昔の私に感心します。

黒帯の二人は性格も良かったし、私は彼らに、いじめられていたわけではなかったし。

それは、ともかく私は行ける日は学校が終わった後、体育館に通いました。何か月通ったか覚えていません。

そして、ついに試合の日がきました。勝ち抜き戦だったか、リーグ戦だったかは覚えていませんが、何人目かで、待ちに待った柔道部の青木との対戦になりました。相手は背も180cmでがっしりした体格ですが、その対策もしっかりしていました。

試合開始から攻めた私は見事に相手を倒し文句のない「1本」を取ったんです。試合を見ていた生徒達もどよめき「1本、1本」と言っていました。

しかし先生は「技あり」と言ったんです。生徒達は1本だとざわめいていました。

柔道は綺麗に技が決まると「1本」で勝負がつきます。

一本までいかなくても、まあまあ綺麗に技が決まると「技あり」となり、「技あり」を2本取ると、合わせて「1本」になり勝負がつきます。

「技あり」までいかなくて、相手を肩や背中から倒したりすると「有効」になり「有効」を2本取ると「技あり」だったと思います。

相手はものの見事に宙に浮き、畳に落ちたのに「技あり」なんて、あり得ないと思いながら気持ちを立て直し、試合続行です。

そこで私は、またもや技が綺麗に決まり、青木を畳にたたきつけたんです。まあ「1本」でもおかしくないけど、もしかしたら「技あり」になってしまうかなという感じでした。

またも生徒たちは、どよめき「1本」だ「1本」だと言っていました。

これがもし「1本」でなく「技あり」になったとしても最初に取った「技あり」と合わせて「1本」になり私の勝ちになります。

私は勝利を確信しガッツポーズで拳をあげました。

青木も負けはわかっていたのでガックリしていた、その時です。

なんと、なんと先生は「有効」と言ったんです。周りも「えー、おかしい」と騒いでいました。

私も絶対おかしいと思いましたよ。でも試合は続行です。

ここで私が「有効」を一つ取れば試合終了です、または時間切れになれば大差で私の勝です。

どの道、勝利は私のものだと確信していた時です。

青木がかけた技で私は体勢をくずしましたが、技はかからず私は軽く横向きに手をついたその時です、先生が「1本」と言ったんです。

ありえない、体勢が崩れただけで「1本」負けになりました。

周りの生徒も「おかしい」と言っていますが、審判員は先生ですから判定は覆るわけがありません

どう見ても「有効」がいいところなのに「1本」で負けました。

これは、試合をする前から勝負はついていたという事です。まあ柔道部のメンツをつぶさないように配慮したんでしょう。スポーツにおける正義は存在しない事を味わった私は馬鹿らしくなり、その日以降は二度と体育館の柔道場には行きませんでした。

真実は一つだったんです、私が勝ったという事。

だけど正義は一つではないという事なんでしょう。柔道部の青木が私に負けたとなると、彼のメンツも柔道部のメンツも丸つぶれになってしまう。だから先生は絶対に私を勝たせるわけにはいかなかったんでしょう。

先生や大人に対しての不信感なんて中学時代から味わっているから、私も青臭い正義をかざし抗議なんてしません。

まあ、こんな事くらいで腐っていたら、早実生にはなれません。

んじゃ また