ムットン調査団230(97、望まないキス)

各位

初恋とか初キスなんて聞くと、みんな気分が高まってウキウキしたり、しませんか?

好きな相手との初キスだったら、めちゃくちゃ緊張するしドキドキして、良い思い出になるでしょう。

でも、世の中、初キスは良い思い出とは限らないことがあります。

私も女性との初キスはとても良い思い出で、甘酸っぱくも、ほろ苦い青春の薫りがします。

今回の話は何も良い思い出にならない、男性との話です。

この男性は、はるか昔、私に何をしたか全く覚えていないだろうなあ。

この男(仮称)上村治郎さんはすでに10年くらい前に管理職を定年退職しています。

彼がまだ現役の頃は同じ管理職なので、仕事の話なども、それなりにしたと思うし、庁内で会えば、ちゃんと挨拶もしたし。まあ、普通の管理職同士の関係ですかね。

ただ私は上村さんと管理職になってから一緒に飲んだ記憶はありません。同じ部にならなかったんでしょう。個人的にはもちろん飲んでません。

上村さんが、かなりの酒好きだというのも知っていました。

ただ、この話は二人が管理職になるよりずっと前の事です。

あの時、私は二十代で上村さんは三十代でまだひら職員でした。

旧庁舎では課長の机の横には必ず4人座れる応接セットがありました。

この応接セットは実に万能の使い方があり、課長の来客はもちろん、職員が机で出来ない大量の書類等の整理を数人で行なったり、昼の職員の弁当を食べる場所でもありました。

さらに、夜になると酒を飲む場所にもなりました。

私は当時、教育委員会の職員で残業中に用事で、廊下を歩いていたら「おーい」とでかい声がしました。

自分が呼ばれたんじゃないだろうと思いながら、声のする方を見ると、どこの課だか忘れたが応接セットに座って二人が酒を飲んでいる。そのうちの一人、上村治郎さんと目があった。

上村さんは「ちょっと、こっちに来い」かなり大きな声で私を手招きしながら呼んでいるので、行かないとまずいなと思い応接セットに近づくと。(仮称)竹田さんという職員と二人でかなり飲んでいて、酔っ払っていた。

竹田さんは知っていましたが、上村治郎さんのことはよく知りませんでした。

上村さんは「まあいいから、ここに座って少し飲んでいけ」とでかい声で命令調だったので、下手に逆らうと面倒になりそうなので少しだけ座って、早々に自席に戻るようしようと思い、上村さんの横に座りました。

ビールをガラスのコップにつがれたので、残業中なので、この一杯を飲んだら自分の席に戻ろうと決めていました。

何を話したかは全く覚えていません、とにかく早く残業に戻りたかっただけです。

コップのビールを飲み干してグラスをテーブルに置いたその時です。

上村治郎さんは突然、すごい力で両手で私の顔を押さえて、次の瞬間に顔を近づけて、いきなりキスをしたんです。結構、強力なキスです、上村さんの口の周りは酒だか、唾だかでびちょびちょです。「ウエー気持ち悪い」って思いました。

一瞬何が起こったのかと混乱していると、さらに私の口やその周りを今度は舐めまくったんです。私の口のまわりは、びちょびちょです。

けっこう、ベロベロなめられたんだけど、いかんせん馬鹿力で顔をおさえられていて、全く抵抗できなかった。犬になめまくられた感じですかね。

突然、予想もしないことが起きると、抵抗も出来ないし何が何だかわからない状態に陥る。

男にキスをされているという事はわかっているのだが、頭の中は混乱し、ややパニック状態になる。やっとキスから解放されて、ようやく次の行動が考えられる。

とにかく、一刻も早くこの席を離れて口を洗いたい。それまでは唾ものまないようにする。

とにかく気持ち悪い。すぐにでも席を立とうと思ったんですが、相手は怪力の酔っぱらい。

いきなり動いて、またやられたら、たまったもんじゃない。

私は酒には口をつけず、唾も飲み込まないようにして、数分たつのを待ってから、「トイレに行ってきます」と言って席を立った。

トイレに着くと、キスをされてからずっと我慢して、たまっていた唾をまず吐き、そのあと入念に口を何度も洗い、やっと一息つけた。

その足で自分の課に戻り残業を続けた。

まあ特に動揺することなく仕事も出来たし、その後もまあ、あんなことがあったなと思うくらいですかね。

でも今でもはっきりと覚えているから、当時はそれなりにショックだったのかもしれない。

初めて男に唇を奪われた体験だったので、一生忘れる事はないでしょう。

どうせ上村治郎さんは、そんな事を、したことすら覚えていないと思うから、彼には、その後そのことについては何も聞いていません。

私は男同士のキスがいけないと言っているのでは、ありませんので誤解のないように。

LGBTQの時代ですから多様な価値観は認めます、また私は男性には興味はありません。

私が言いたいのは誰であっても、いきなり初対面の相手を犬みたくなめるのはダメだと言ってるんです。

今だったらセクハラで一発アウトですね。

そんなわけで今回の話は男性とキスをした最初で最後の体験でした。

まあ人生は長いので、将来偶然、居酒屋で上村さんに会うかもしれませんので最後と言い切るのはやめておきましょう。

人生は驚きの連続ですから。明日、何がおこるか未来は誰にもわかりません。

だから人生は面白い、だからどんな時でも慌てずに冷静に対応しましょう。

明日は明日の風が吹く のですから